近くのビルやマンションのせいでテレビが映りにくくなり、建物側の負担で共同アンテナやケーブルテレビにつないでもらっている。ところが「電波障害の補償を終了します」という通知が届いた、あるいは補償がいつまで続くのか分からず不安になっている、という方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、電波障害の補償期間は法律で一律に決まっているわけではなく、建物を建てた側(原因者)と受信者との協定や話し合いの内容で決まります。「20年」という数字は国の費用負担の基準に出てくるものですが、すべての補償が20年で終わるという意味ではありません。補償が終わると分かったら、協定の内容を確かめたうえで、自宅にアンテナを立てられるか電波を調べてもらうのが近道です。
この記事では、電波障害の補償の仕組み、補償期間の考え方、補償が終わるときに確認すること、自宅アンテナに切り替える流れと費用相場を順番に解説します。
※見積もりだけでもOK
電波障害の補償とは?誰がどんな対策をしてくれるのか
高い建物が建つと、送信所から届く地デジの電波が建物に遮られたり(遮へい障害)、建物に反射した電波が混ざって映像が乱れたり(反射障害)することがあります。こうした受信障害を、建物を建てた側が費用を出して解消するのが、一般に「電波障害の補償」と呼ばれているものです。
費用を負担するのは原則として建物を建てた側
電波障害の対策について、すべての建物に共通する法律の定めがあるわけではありません。自治体によっては、中高層の建物を建てる際の要綱などで「障害の原因となった建築主が、自分の責任と費用で対策を行う」という考え方を示しており、実際の対策の内容や費用の分担は、建築主と受信者(住民)との話し合いで決めるのが通常です。対策が終わったあとの設備の維持管理の方法や費用も、協議で決めると定めている自治体があります。
補償の主な方法は3つ
共同受信施設(共聴施設)につなぐ
原因となった建物の屋上など、電波を受けやすい場所に共同のアンテナを立て、周りの住宅まで線を引いて分配する方法です
ケーブルテレビにつなぐ
受信障害が起きた家をケーブルテレビの回線に接続し、地デジを見られるようにする方法です。接続費や利用料をどこまで建物側が負担するかは取り決め次第です
自宅のアンテナを改善する
アンテナの向きを変える、高性能なアンテナに交換する、マストを高くするなど、個別の工事で受信できるようにする方法です
自分の家がどの方法で補償を受けているかによって、補償が終わったときにやるべきことが変わります。まずは、テレビの線がどこから来ているか(自宅の屋根のアンテナか、外から引き込まれた線か)を確認しておきましょう。
なお、補償を受けていない家で「近くにビルが建ってから急に映らなくなった」という場合は、まず原因を調べることが先です。ビルの影響なのか、アンテナや配線の劣化なのかは、専用の測定器で電波を測ると見分けられます。現地調査を無料で行っている業者もあるので、原因が分からないときは一度見てもらうと安心です。
電波障害の補償期間は何年?「20年」といわれる理由
「電波障害の補償は20年で終わる」という話を耳にすることがありますが、これは正確ではありません。20年という数字がどこから来ているのか、実際の期間は何で決まるのかを整理します。
国の費用負担の基準では維持管理費を20年分で計算する
道路などの公共施設が原因でテレビの受信障害が起きた場合について、国(旧建設省、現在の国土交通省)は費用負担の基準を通知で示しています。この基準では、共同受信施設の維持管理にかかる費用を20年分として計算し、まとめて支払う(渡し切り)考え方がとられています。「20年」という数字は、主にここから来ています。
つまり、この基準は「20年分の費用を最初に計算して支払う」という算定の方法を示したもので、「20年たったら補償を打ち切ってよい」と法律で決めたものではありません。また、この基準はあくまで公共施設についてのもので、民間のビルやマンションにそのまま当てはまるわけでもありません。
民間の建物の補償期間は協定書の内容で決まる
民間のビルやマンションが原因の場合、補償の期間や範囲は、建築主と受信者(または住民の組合)が結んだ協定書・覚書で決まります。期間を区切っている協定もあれば、期間の定めがない協定、建物が残っている間は対策を続けるとする協定もあります。総務省も、共同受信施設の費用負担について、当事者の間で合意ができている場合はその合意内容が優先されるとしています。
地デジ化をきっかけに対策が終わったケースも多い
アナログ放送の時代は、ビルによる受信障害が起きやすく、各地にたくさんの共同受信施設が作られました。地デジはアナログに比べて建物の影響を受けにくいため、地デジへの移行(2011年)に合わせて、多くの施設が廃止されたり、住民の組合に譲り渡されて原因者側の対策が終わったりしました。今も補償が続いている家でも、施設の老朽化や建物の建て替えをきっかけに、補償の見直しを申し出られることがあります。
補償が終わると言われたときに確認すること
補償終了の通知が届いたら、あわてて工事を決める前に、まず補償をしている側(建物の所有者・管理会社や、共同受信施設の管理者)に次の点を確認しましょう。通知に書かれている問い合わせ先に聞くのが早道です。
協定書・覚書の内容
補償の期間や終了の条件がどう書かれているか。手元に控えがなければ、写しをもらえるか聞いてみましょう
終了する日と、その後の設備の扱い
共同受信施設やケーブルテレビの接続がいつ止まるのか、引き込み線はいつ撤去されるのか
切り替えの費用を負担してもらえるか
自宅アンテナの設置費や、ケーブルテレビを自分で契約し直す費用について、何らかの負担や移行の支援があるか
BS・CSの扱い
共同受信施設やケーブルテレビでBS・CSも見ていた場合、終了後はBSアンテナも自分で用意する必要があるか
共同受信施設のケーブルや機器は、施設の管理者のものです。補償が終わる前に自分で線を切ったり、外したりするのはやめましょう。撤去の段取りも、管理者からの案内に合わせて進めるのが安心です。
マンションにお住まいで、建物全体として近くのビルの補償を受けている場合は、個人ではなく管理組合が窓口になります。管理会社や理事会から案内が出ていないか確かめてみてください。
補償が終わったあとにテレビを見る方法
補償が終わったあとにテレビを見続ける方法は、大きく分けて3つあります。毎月の料金がかかるかどうかが大きな違いです。
自宅にアンテナを立てる
最初に工事費がかかりますが、その後の月額料金はかかりません。電波を受信できる環境であることが前提です
ケーブルテレビを自分で契約して続ける
工事が少なく済むことが多い一方、利用料は自己負担になります
光回線のテレビサービスに切り替える
光回線を使っている家なら選択肢になりますが、こちらも月額料金がかかります
長く住む予定なら、何年か使うと工事費の差を月額料金が上回ることが多く、アンテナのほうが総額を抑えやすくなります。費用の比べ方は光テレビとアンテナどっちがお得?費用総額と向いている人を比較で詳しく解説しています。
自宅アンテナを考えるなら、まず電波調査をする
補償が始まったころと今とでは、受信環境が変わっていることがあります。地デジは建物の影響を受けにくくなったとはいえ、原因の建物がすぐ近くにある場合や、送信所の方向を大きなビルがふさいでいる場合は、今でも普通のアンテナでは映りにくいことがあります。工事を頼む前に、業者に屋根の上やベランダで電波の強さと品質を測ってもらい、どこに・どんなアンテナを付ければ映るかを確かめてもらいましょう。
電波が弱い場合でも、アンテナを高い位置に付ける、反射してくる電波を拾う、感度の高いアンテナやブースターを使うといった方法で受信できることがあります。ビルの影響への対策は近くにビル、テレビが映らなくなった時の原因とマスト延長など対策、電波が弱い地域でのアンテナ選びは地デジの弱電界地域に向くアンテナは?選び方とブースター・費用を解説で解説しています。
補償が終わる日までに工事を済ませる
共同受信施設の停止日やケーブルテレビの接続が切れる日を過ぎると、その日からテレビが見られなくなります。業者の予約が混み合う時期もあるため、終了日が分かったら早めに見積もりを取り、停止日より前に工事日を決めておくと安心です。
自宅アンテナに切り替える費用相場
補償の終了にあわせて自宅にアンテナを立てる場合の、一般的な費用の目安をまとめました。複数のアンテナ工事の情報をもとにした目安で、家の形や電波の状況、使う機器、業者によって金額は前後します。
| 工事内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 電波調査(現地調査) | 無料〜10,000円程度 |
| 地デジアンテナ(八木式)の設置 | 15,000円〜40,000円程度 |
| 地デジアンテナ(デザインアンテナ)の設置 | 20,000円〜60,000円程度 |
| BS・CSアンテナの追加設置 | 15,000円〜30,000円程度 |
| ブースターの設置(電波が弱い場合) | 15,000円〜35,000円程度 |
| 宅内の配線・分配器の調整 | 5,000円〜20,000円程度 |
| マストの延長・支線の補強 | 10,000円〜30,000円程度 |
地デジとBS・CSのアンテナを一緒に付けると、工事を2回に分けるより出張費や作業費を抑えやすくなります。共同受信施設やケーブルテレビでBSも見ていた家は、地デジと同時に見積もりを取りましょう。
見積もりを取るときに伝えること
- 近くのビルなどの影響で、これまで電波障害の補償を受けていたこと
- 補償が終わる日(共同受信施設やケーブルテレビが止まる日)
- 地デジだけか、BS・CSも見たいか、テレビを見る部屋の数
- 受信できなかった場合に費用がかかるか、見積もり後に追加料金が出る条件があるか
補償をしている側が切り替え費用の一部を負担してくれる場合は、見積書の提出を求められることがあります。工事内容と金額の内訳が分かる見積書を出してもらっておくと、話し合いにも使えます。
※工事後のチャンネル設定まで対応
補償の話し合いがまとまらないときの相談先
補償の終了に納得できない、協定書の内容と説明が違うといった場合は、まず補償をしている建物の所有者・管理会社と、協定書を見ながら話し合うのが基本です。そのうえで、次のような窓口に相談する方法もあります。
自治体の担当窓口
中高層建物の電波障害について要綱を定めている自治体では、建築や環境の担当課が考え方を案内していることがあります
総務省の総合通信局
テレビの受信相談を受け付けています
弁護士などの専門家
協定の解釈や費用の請求で争いになった場合
ただし、行政の窓口は制度の考え方や相談先の案内などはしてくれますが、アンテナ工事そのものを行うわけではありません。話し合いに時間がかかってもテレビが見られない期間を作らないように、工事の見積もりは並行して取っておくのがおすすめです。
電波障害の補償に関するよくある質問
補償が終わったら、すぐにテレビが映らなくなりますか
共同受信施設が止まる、ケーブルテレビの接続が切れるといった時点で、その線につながっているテレビは映らなくなります。補償の終了日と、設備が実際に止まる日が違うこともあるので、両方を確認しておきましょう。
室内アンテナで代わりにできますか
送信所に近く電波が強い地域なら、室内アンテナで映ることもあります。ただし、もともとビルの影響で電波障害が起きていた場所は、室内では電波がさらに弱くなるため、安定して映らないことが多いです。まずは電波を測ってもらい、屋外に付ける必要があるかを判断しましょう。
新しく建ったビルで映らなくなった場合も補償されますか
建物の建設が原因であれば、建築主が対策をするのが基本的な考え方です。ただし、ビルが原因かどうか、どこまで対策するかは個別の話し合いで決まります。工事現場の看板にある連絡先などに早めに相談し、映らなくなった時期や症状を記録しておくと話が進みやすくなります。
まとめ
電波障害の補償期間は、法律で一律に決まっているものではなく、建物を建てた側との協定や話し合いで決まります。「20年」は国の費用負担の基準で維持管理費を計算するときの年数で、すべての補償が20年で終わるという意味ではありません。
- 補償終了の通知が来たら、協定書の内容・終了日・切り替え費用の負担の有無を確認する
- 共同受信施設の線や機器は自分で外さず、管理者の案内に合わせる
- 自宅アンテナを考えるなら、業者に電波調査をしてもらい、受信できる位置とアンテナを確かめる
- 設備が止まる日より前に工事を終えられるよう、早めに見積もりを取る
自宅に地デジアンテナを立てる費用は、八木式なら15,000円〜40,000円程度が目安です。月額料金がかからないアンテナに切り替えられるかどうかは、現地で電波を測ってみないと分かりません。補償が終わると分かった時点で、まずは無料の現地調査・見積もりを頼んでみましょう。
※見積もりだけでもOK








